機械安全 / 有限会社フェイス Faith Inc.
リスクアセスメント

概要

機械指令の付属書Iの一般原則にて、メーカーはリスクアセスメントを実施しなければならないとあります。 また、国内でも労働安全衛生法によりリスクアセスメントの努力義務化が言われています。 産業機械類には多くの危険源が含まれ、規格基準でリスク評価ができない場合や、規格でカバーされないリスクもありますので、包括的にリスクを見直す意味でリスクアセスメントは大事な作業として位置付けされています。 低電圧指令では本文にも付属書Iの安全目標にもリスクアセスメントの実施要求の記載はありませんが、付属書IIIの技術ファイルのところにそれらしき事が書かれています。 低電圧指令の整合規格には電気の危険を主体にそれ以外の危険源に対する防護要求が含まれているため、改めてのリスクアセスメントの有効性に疑問も残りますが、指令のガイドラインではそうでもないような事が書かれています。 いずれにしましても、リスクアセスメントは機械製品、電気製品にとらわれず、多くの製品分野に横断的に関わる実施事項として考えられます。

機械のリスクアセスメントはENISO 12100機械の設計原則・リスクアセスメント・リスク低減(= JIS B9700)でその方法論が紹介されています。 方法論はなんとなく理解できて、意味合いを深く考えるのもいいのですが実務レベルでの具体的な記載が少なくあまりパッとしません。 ENISO 12100が制定される前にリスクアセスメント本来の技術レポートがISOから発行されており、ISO/TR 14121-2はその具定例の記載もあり、実務的にはISO/TR 14121-2のほうが参考になりやすいと考えます。

ENISO 12100の経緯と構成

ENISO 12100 リスクアセスメント方法論

ENISO12100にて紹介されているリスクアセスメントの方法論として、①機械の仕様を明確にする、②危険源を洗い出す、③危険源のリスクを査定する、④リスクの妥当性を評価する、になります。 作業者には作業タスクがあり、機械には危険源があります。 機械に携わって作業者は作業を行いますので、両者のコラボ状態において危険な事象が発生してしまいます。 そこでの危険源を見つけて、その危険源のリスクの度合いを査定し、そのリスクの妥当性を評価していくのがリスクアセスメントになります。

リスクアセスメント方法論

①機械仕様の明確化

機械仕様を明確にすることは、リスクアセスメントの対象としている機械を特定することにあります。 また同時に機械との作業においての作業タスクを確認していきます。 作業タスクは据付け、操作、保守点検、廃棄の機械のライフサイクル上で通常の作業としてどのような作業が意図されているのか確認になります。 取扱説明書には通常作業における作業項目が記載されますので、取扱説明書の記載内容の確認にもなります。 また、どのような製品でも予見可能な誤使用があった場合でも、一故障が発生した場合でも安全の確保は要されます。 どのような誤使用が予想されるかを想定し、どのような一故障が発生するかも想定する作業がこの最初のステージでの検討事項になります。

機械仕様の明確化

②危険源の洗い出し

危険事象の洗い出しでは、①意図された作業タスク(取扱説明書)、②予見可能な誤使用、③一故障状態においてどのような危険事象があるかを洗い出していく作業になります。 誰が、そのような作業をした時に、どのような危険な状態に陥るのか、また、洗い出された危険事象をもとに、その時の作業タスク、危険源、リスクの度合いを皆さん各人がメモをとりながら洗い出していきます。

危険源の洗い出し

危険源については、どのようなものを危険源として考えるかが、ENISO 12100の付属書Bに紹介されています。

危険源

③リスクの査定

リスク度合いの査定では、危険事象から洗い出された危険源について、リスクが高いのか低いのかを査定していく作業になります。 一般的に、リスクの度合いは、①危害の大きさと、②発生頻度のパラメータで設定することになります。 ただ、小さい危害が年に何十回も発生するのと、大きな危害(死亡、後遺症レベル)が数年に一回発生するのとでは、リスクの度合いは異なります。 特に小さい危害のほうはちょとした工夫でその発生を無くせるのに対し、大きな危害はあってはならない事になります。 よって、リスク度合いは危害の大きさをもとに決める傾向として考えることになります。

リスク度合いを設定する手法としては、リスクグラフのような枝分かれ方式、パラメータ毎の点数を加点する方式等、いろいろあります。 ENISO12100では特にその手法を限定しているわけではありません。 ここではISO/TR 14121-2にて紹介されているリスクグラフ法で紹介します。 リスクグラフ法でのリスク度合いを決定するためのパラメータは4つあり、①危害の大きさ、②接近頻度、③発生の可能性、④回避の可能性になります。 洗い出された危険事象をもとにその状況での危険源のリスクの大きさを査定していくことになります。

リスクの査定

④リスクの評価

査定された危険源のリスクの大きさについて、受け入れ可能であるか、またはリスク低減の追加対策をしないといけないのかの検討をすることがリスクの評価になります。 査定されたリスクの度合いが大きく許容できない場合は、更なるリスク低減のための対策が要されることになります。 リスク低減は3-ステップメソッドと言う手法にて、①本質安全設計、②安全防護の採用、③残留リスクとしての明示の3つを順番に段階的に検討することになります。 ①と②で極限までリスクを低減しますが、それでも大きなリスクが残留する場合、根本的な設計の見直しも要されてきます。 リスクの低減ではリスクゼロの概念はないため、比較的小さいリスクが残留するレベルであれば、③の手法で残留リスクを明示することになります。

リスク評価

⑤取説への記載

残留するリスクのうち、使用者に伝達しておいたほうがよいリスクについてはその内容を取扱説明書で説明を行い、同時に機械上には警告シンボルの表示を行い残留するリスクを明示します。 小さいリスクを残留リスクとして取り上げてしまうと、本来のリスクが見えにくくなるのと、機械のイメージにもつながるため、明示するリスクの吟味は比較的重要にはなります。 このように、どのようなリスクが機械に残留しているかは、リスクアセスメントを実施することで明確にすることができます。 別の意味でリスクアセスメントが実施されないと残留リスクの根拠があいまいな状態のままということになります。

また、リスクアセスメントの最終段階で、これまでに検討された内容をレポートにまとめる作業になります。 様式は特に限定されるものはありませんが、それ以降の改造時とか、類似機の設計時とかに第三者が見てもわかりやすく記載しないといけません。 レポート様式は横長になりやすい傾向ですが、ポイントを抑えたシンプルな様式での作成が適切と考えます。 末尾に様式事例を載せてますので、ご参考にして下さい。

取扱説明書 - 残留リスクの明示

リスクアセスメント実施ステップ例

これまでの記載はリスクアセスメントの方法論に応じた流れになります。 実際の現場では先にリスク度合いが決まっていたり、すでに警告シンボルが貼られていたりすることもありますが、現場側でリスクアセスメントを計画される場合の実施ステップとして次のような提案をします。

リスクアセスメント実施ステップ例

安全の定義

機械安全に関しての多くの規格が制定されていますが、「安全」という言葉を定義している規格は見あたりません。 規格を使って機械を設計する上で安全の概念が規格の全てに行き渡っているためわざわざ言及するまでもなく、それで定義付けがされていなと予想されます。 ただ、規格を作成する上ではいくつかの共通概念がないとバラバラな思想での規格作りになります。 そこで、規格作成者のためのガイドラインが発行されており、機械安全についてはISO/IECガイド51がそれにあたります。 ガイド51には「安全」の言葉の定義付けがされています。 安全、リスク、危険源、危害等の言葉が多くの規格で使われてますが、それら機械安全の元となる考え方がそのガイドには示されています。

ISO/IECガイド51

リスクアセスメントレポート - 様式解説

リスクアセスメントレポート - 実例

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